この映画は、北アイルランドの英王国への帰属に加えて、本国によるプロテスタントの優遇政策もあり、住民がカトリックとプロテスタントの2派に分かれた争いを背景にしている。 蛇足ながらベルファストは北アイルランドの首都であり、71は1971年の略である。
アイルランドを舞台にした「フィオナの海」 「ケス」 「麦の穂をゆらす風」 「スカートをひるがえす風」 等多くの映画があるが、いずれも豊かな風景に加え、永い忍従の歴史と物悲しい民族の息吹に満ち満ちている。
余談だが、「麦の穂をゆらす風」では、情報を漏らしたことで叔父が甥をピストルで処刑する、身内ゆえに辛い苦渋の表情が忘れられない。
又、「スカートをひるがえす風」 では第2次大戦下、不時着したドイツ兵と同じ様なイギリス兵が席を同じくする場面があり、イギリス兵はまもなく送還される。 戦後チャーチルはアイルランドの中立を苦々しい思いをこめてなじったという。
さらに余談だが、風情の全く違う映画がある。 J・フォード監督J・ウエイン主演の「静かなる男」 、延々と続くビクター・マクラグレンとのなぐりあい、と共に赤毛のモーリン・オハラはアイルランド女そのもので、何度見てもあきないがアメリカ映画である。
アイルランドの歴史にはどこかなじまない。しかし、そのロケ地は有数の観光地となって、里帰りのアメリカ人を引き寄せている。
アイルランド島はヨーロッパで最後にキリスト教化され1937年ヨーロッパ最新参の独立国である。もっとも、冷戦によるソ連崩壊後、バルカンでの合掌連衡を除いての話であるが。
この独立に際して、分離を支持・反対の両派に分かれ激しい抗争があって、反対派が北アイルランドに押し込まれ独自の憲法をもった自治領の、2か国体制になった。
国土 成立年 首都 カトリック プロテスタント
共和国 4/5 1939 ダブリン 94% 4%
自治領 1/5 1971 ベルファスト 30% 55%
注) %は住民比であり、自治領の100%未満は無効票14%がある
独立前、ダブリン周辺は工業が発達して、多くのプロテスタントが居住していた。 今は居ない、いかに激しい民族浄化の争いがあったかと思われる。また、自治領の都市部では、両派の居住区はハッキリ分離され、混住していない。
映画は、カトリック、プロテスタントがそれぞれ硬軟両派に分かれ、これらの調停役として駐屯するイギリス軍も、諜報機関が独自に地下組織を持ち、しかもその長が正規軍の司令官よりも上位である。更に、IRAがカトリック過激派の資金源として加担している。
そもそもIRAは独立後用済みのはずだが、それ以降も存続するには、アメリカに移民した人々の故国へのゆがんだ郷愁故のことで、TVコロンボにこの辺りの情景が登場した。
映画は、治安警察活動中の1兵士が部隊行動から外れただ1人残され、イギリス兵と分かれば命の保証がない、誰が敵で味方かが分からない極限状況で右往左往する。
映画の約束で、辛うじて生き延びる、しかもどの会派かの要人を殺害した上で、まことにすさまじい活劇である。チャンバラ好きにはこの上ない満足感を与えるだろうが、多くの観客は何が何やらサッパリ分からぬ内に、THE ENDの映画ではないか。
バルカンを経て、中東でISISに至る過激派行動はアイルランドに始まったのではないか。キリスト教、イスラム教の進度の差が無法性と、残忍度に表れている。
2015-10-9
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