兵頭二十八さんによる

トリップワイヤ-とは狩猟のワナに結ばれている仕掛けヒモのことです。軍事では、手りゅう弾に結ばれているロ−プで引っかけると爆発するものや触れると浸入を知らせるものを、そのように呼ぶようになりました。 さらにそれが転用されて、侵略国にその行為を思いとどまらせるための「再外縁配置分哨」を表現します。
具体的には国境に配置されている小部隊が攻撃されれば、軍隊の末端にも自衛権があるので応戦します。世界へ攻撃した国と自国は応戦中だとニュ−スが流れます。あらかじめその分哨の存在が知られているなら、そこへの侵攻はためらうでしょう。なぜなら 現在では「自衛戦争」だけが国連が認める数少ない戦争だからです。他の国も自衛戦争を遂行中の国には堂々と助太刀できる・集団的自衛権の行使をしてもらえることになります。侵略国の味方をする国はその仲間だと認定されて経済制裁の覚悟しなくてはなりません。
海上では他国の領海線を越えて「無害通航ではない通航」をやったぐらい、また保安庁の巡視船へ中国の海警の船がぶつかってきても、それは挑発ではあるがトリップワイヤを引っかけたことになりません。(軍艦どうしが砲撃戦をやれば別です)
そこで偽装海難で漁民を上陸させて、救助の名目で武装警察を尖閣に居座らせたら、保安庁の実力では排除できないでしょう。時間がたつと中国の尖閣を実効支配したということになります。尖閣にトリップワイヤ−が無ければそうなります。米国大統領は明確に日中の交戦がないかぎり守ってはくれません。だから中国は先に発砲するような愚かなことをしない。尖閣には警察を上陸させて占拠するチャンスはあるので。日本の警察と保安庁が実力排除できなくて自衛隊を出したら、外見的には日本が先に手を出した侵略者であるように見えてしまう。
それではどうしたら良いのでしょうか。ホンモノの漁民が上陸し、それを救助することを名目とした警察機関を上陸させないようにするには、少人数でも島に陣地建設や守備隊を置くことです。自衛隊法では、武器を守るためなら、その場で隊員が武器を使用してよいようになっています。旧式戦車を砲台にして設置しておくと、怪しい人が上陸すれば、その人が軍服を着ていなくても、現場の指揮官は砲台と弾薬を守るために警告射撃や射殺ができます。これがトリップワイヤ−です、しかも低予算の。
実効支配されてしまったら、アメリカなしで取り戻すことはできるのでしょうか。 習近平が内政に問題が生じたら、外に目を向かせるめに尖閣を持ち出す可能性は大きいでしょう。たとえ小さな国境紛争であっても、自衛隊で奪還作戦をやれば、在中日本人や企業が大きく被害を受けるでしょう。尖閣にトリップワイヤ−を置けば当面は大きな反発があるでしょうが、奪還作戦の影響に比べれば小さいものになります。
2017-6-27