
Hacksaw Ridge(のこぎり崖)の戦いとは、沖縄戦のなかでのアメリカ側の呼び名で日本では「前田高地の戦い」と呼んでいます。
この映画の前半は、子供時代から成人になって兵役志願し新兵訓練を受ける期間までです、後半は沖縄での戦いになります。

デズモンド・T・ドスさん(1919-2006年) グアム、レイテ、沖縄で戦いました。
主人公のデズモンド・T・ドスさんは沖縄戦で70人余におよぶの多数の傷兵を助けたことにより(日本人2名も)米国の最高の名誉勲章を受けたという実話です。 彼は良心的兵役拒否が認められる信仰をもち、武器は持たない衛生兵として志願した。彼が訓練を受けた部隊では臆病者として同僚や上官より心身ともに虐待を受ける。最後は上官の武器を持っての訓練命令を拒否したということで軍法会議にかけられる。
父親は第1次大戦に行き、そこで幼馴染の3人も戦死した。それにより大きな精神的痛手を受けて、帰還してからアルコ−ルに浸り家族に暴行を繰り返すような人になった。しかし映画では、その父親が出世していた昔の上官に、「良心的兵役許可者に対する命令が無効である」とする手紙を書いてもらい、それを軍法会議に提出した。息子に控訴無効を勝ち取る。
大事なところで、日常的に破綻している父親でも、息子の信念を守ることに大いに貢献をなす。そのシ−ンにはこちらは胸が苦しくなっていくものです。
彼は殺されてもおかしくないような状況で奇跡的に兵士を助けるのですが、神が味方したとしか思えません。 この映画では、戦闘場面の描写は現実がそうなので、残酷です。
不思議なのは203高地の日本軍の戦いを見せられているように、米軍は何度も白兵戦を挑んで傷つき撃退されて戦います。 空軍の対地援助の場面は描かれていません。映画好きの友人は戦闘場面に不満を感じたようです。また、あの高地のある浦添地区の住民の戦死者は40%を超えたといいます。住民との戦闘場面も表現されてはいません。主人公を描くにはそのような場面は必要なかったのでしょう。
やっぱりアメリカには負けるはずです。物力の差だけではありません。アメリカは、良心的兵役拒否の制度が存在し、その上に兵士になっても人は殺さないという個人的信念を貫き通すことができて志願した兵士と、日本のように学徒出陣兵や少年兵のような強制された兵士と戦うのですから。この映画でもドスの兄弟が徴兵でなく自ら志願するシ−ンがある。強制された愛国者と志願による愛国者では志気の違い・精神的な差があるのでしょう。
いい映画でした。
2017-7-1
映画のペ−ジ
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